COLUMNコラム

【プレス加工とは?】ものづくりの原点から未来へ

「金型プレス加工」についてご紹介します。

実は私たちの身の回りにある「ほぼすべてのモノ」が、プレス加工によって形を与えられていると言っても過言ではありません。

たとえば、スマートフォンの部品、車のドア、洗濯機のパネル、そしてお弁当のアルミカップまで!

今回は、そんな縁の下の力持ち「金型プレス加工」について解説します。

 

 

金型ってそもそも何?

 

 

まず、「金型(かながた)」とは、読んで字のごとく「金属の型(かた)」のこと。

粘土を型に押し当てると形ができるように、金属の板をこの「金型」に挟んで力を加えると、決まった形に成形されます。

この型はまるでお菓子作りのクッキー型のようなもの。

型に押し込むのが「鉄板」や「アルミ板」で、強力な機械の力で押し込むのです。

用途によっては、1トン、10トン、時には1000トン級の圧力がかかることも!

 

 

金型プレス加工とは?

 

金型プレス加工とは、「金型(かながた)」と呼ばれる専用の型に押し当てることで、目的とする形状に成形する加工技術のことです。

金型は、上型(パンチ)と下型(ダイ)の2つから構成されており、この上下の金型の間に金属板を挟み込み、プレス機の強力な力で瞬時に圧力をかけることで、金属を意図した形に成形します。

プレス加工の最大の特徴は、高精度かつ大量生産に適している点です。

一度金型を作れば、同じ形状の製品を何万個、何十万個と均一な品質で短時間に加工することができます。

 

 

プレス加工の種類

 

プレス加工にはいくつかの種類があり、目的や形状に応じて使い分けたり、複数の加工を組み合わせたりします。

ここでは代表的な3つのプレス加工を紹介します。

 

1.せん断加工

 

「せん断加工」は、金属を切断するための基本的なプレス加工のひとつです。

金属板を上下の金型で挟み、一気に押し込むことで、金属を“チョキン”と切断します。

例えるなら、巨大なハサミで紙を切るようなイメージです。

ただし、刃物で切るのとは違い、金属にかかる圧力によって破断させるため、切断面には「せん断面」と「破断面」が生まれます。

このバランスをコントロールすることで、美しく滑らかな切断が可能になります。

せん断加工は、部品の輪郭を切り出す「打ち抜き」や、不要部分を取り除く「トリミング」など、あらゆる製品の加工工程で活躍します。

 

2.曲げ加工

 

「曲げ加工」は、金属板を決められた角度にグイッと曲げる技術です。

紙を折り曲げて立体的な形にする“折り紙”のように、平らな金属板が一瞬でコの字型やL字型に成形されます。

この加工では、金属の「伸び」や「圧縮」を考慮しながら、正確な角度や寸法を出す必要があります。

たとえば、自動車の骨格部品や家電製品の筐体部品など、強度と精度が求められる分野で多く使われています。

 

3.絞り加工

 

「絞り加工」は、金属板を引き延ばしながら、立体的な形に成形する高度な技術です。

プレス機の力で金属を“ぐいーん”と引き込むように伸ばしていき、底のある容器やおわん型、カップ型の製品を作ります。

この加工は、金属を割らずに形状を整えるために、高い技術と精密な金型が必要です。

代表的な製品としては、自動車の燃料タンク、調理器具の鍋・ボウル、エアロゾル缶などがあります。

形を変えながらも金属の厚みや強度を保つ、まさに職人技が光る工程です。

これらの加工を単体で使うこともあれば、組み合わせて連続的に行う「順送プレス」や「トランスファープレス」のような工程も存在します。

たった1枚の金属板から、美しく、強く、そして精密な部品が次々と生まれていく――

それがプレス加工の魅力であり、日本のものづくりを支える重要な技術です。

 

 

プレス加工のメリット

 

 

金属加工にはさまざまな方法がありますが、その中でも「プレス加工」は、長年にわたって多くの製造現場で採用されてきた王道とも言える存在です。

ではなぜ、多くの製品がプレス加工でつくられているのでしょうか?

モノづくりの現場がこの技術を手放せない理由。

ここでは、代表的なメリット5つをご紹介します。

 

1.大量生産に強い

 

プレス加工の最大の魅力です。

一度「金型(かながた)」をつくれば、何百個、何千個、何万個でも同じ部品を高速かつ正確に生産できます。

製品1個あたりのコストもどんどん安くなっていくため、大量生産にピッタリです。

たとえば自動車のドアやスマホのボタンなど、数が必要な製品に適しています。

 

2.高い寸法精度・品質が保てる

 

金属を型で成形するプレス加工では、毎回同じ形、同じ精度で製品をつくることができます。

しかも、高精度な金型と設備を使えば、ミクロン(1/1000ミリ)単位の精度で加工することも可能です。

品質がバラつきにくく、組立や検査の効率もアップします。

 

3.成形スピードが速い=納期が早い!

 

一度プレス機に材料をセットすれば、数秒で1つの部品が完成します。

もちろん職人のコントロール術もありますが、このスピード感が、短納期や突発的な大量注文にも柔軟に対応できる理由です。

量産品において「スピードと安定供給」は大きな武器になります。

 

4.金属を無駄なく使える=コストダウンにも!

 

プレス加工では、材料の使い方を計算して型を設計するため、ムダが少なく、歩留まり(材料をどれだけ有効活用できるか)が良いのが特長です。

原材料価格が上がっている今の時代にこそ、非常に重要なポイントとなってきます。

 

5.工程の自動化に最適

 

ロボットアームや自動供給装置、センサーなどを組み合わせることで、完全自動のライン化も可能です。

プレス加工は自動化と相性抜群の加工法でもあります。

また、機械に任せることで省人化が進み、人的ミスも減るという点も強みです。

 

 

プレス加工のデメリット

 

プレス加工は多くのメリットを持つ金属加工法ですが、使いこなすにはいくつかの注意点があります。

強力な技術にも「弱点」があるということで、ここではあえて弱点に焦点を当ててみます。

 

1.金型製作に時間とコストがかかる

 

プレス加工は金型ありきの加工法です。

この金型を作るには、

「高度な設計力」

「熟練の加工技術」

「数十万~数百万円の費用(場合によってはもっと)」

が必要になります。

量産する製品なら元は取れますが、少量生産や試作には向きません。

 

2.形の変更が難しい

 

製品のデザインや寸法を途中で変えたくなっても、一度作ってしまった金型は「簡単には直せない」ことが多いです。

ちょっとした変更でも、金型の作り直し=追加コスト&納期延長になる可能性もあります。

 

3.複雑な形状には不向き

 

プレス加工は、「押して、曲げて、引き延ばす」には強いですが、自由曲面や立体的な細かい凹凸など、複雑な形状の再現には限界があります。

その他の加工方法、たとえば切削加工や鋳造、3Dプリンタなど、模索しながら適した加工方法を見つける必要があります。

 

4.初期投資が大きい

 

プレス機本体も決して安価なものではなく、大型機では数千万円以上になることもあります。

さらに、材料供給装置・安全装置・金型脱着装置などを含めると、工場に導入するハードルは高めです。

設備投資にはそれなりの初期投資が必要なため、スタートアップ事業にとっては参入障壁にもなり得ます。

 

5.安全管理が重要

 

プレス加工は、非常に大きな力で金属を加工します。

そのため、作業者の安全確保が最重要課題です。

・プレス機への手の巻き込み

・金型交換時の事故

・材料跳ね返りによるケガ

など、事故リスクは常に念頭に置き、油断は禁物です。

安全装置の導入や作業教育の徹底が求められます。

 

 

このようにデメリットはいくつかありますが、弱点も理解しながら「量産性・精度・スピード」に強いプレス加工の強みを活かすことが適材適所の加工方法を選ぶヒントにもなります。

「ものづくりに正解はひとつではない」

製品の形状、数量、コスト、納期、さまざまな条件に応じて技術の使い分けが重要になってきます。

プレス加工の“圧倒的な力”を活かすには、その力を発揮できるフィールドを見極めることが大切です。

 

 

プレス加工の使用例

 

身の回りにある日用品や機械部品も、実は「プレス加工なしには成り立たない」ものが多いです。

ここでは、代表的な使用分野と具体例をご紹介します。

 

1.自動車業界

 

まさにプレス加工の花形!車1台の中には数千点以上のプレス部品が使われています。

 

・ドアパネル

・ボンネット

・ホイール部品

・ブレーキ周辺の金属部品

 

自動車は、軽さ・強度・コスト・生産スピードすべてが求められる分野。

高張力鋼板(ハイテン)を扱うプレス加工技術が活躍します。

安全性を保ちつつ、ボディを軽量化できる=燃費向上にも貢献しています。

 

2.家電製品

 

エアコン、冷蔵庫、洗濯機、テレビ、パソコンなど、家電の外装・内部パーツにも多数のプレス部品が使われています。

 

・スイッチの金属プレート

・モーター部のケース

・電子基板を固定するブラケット類

 

プレス加工なら、見た目もキレイで精密な部品が大量生産できるため、コストと信頼性を両立できます。

 

3.医療・福祉

 

命を守る現場でもプレス加工が使われています。

衛生的で精度が高い金属部品を効率よく作れる点が強みです。

 

・手術用器具の部品

・医療ベッドのフレーム

・車椅子の金属部品

・義手・義足の部品

 

最近では、チタンやステンレスなどの難加工材にも対応するプレス技術が進化しています。

 

4.スマートフォン・精密機器

 

スマホやノートパソコンの中にも超小型のプレス部品が使われています。

 

・SIMトレイ

・端子やコネクタ部品

・金属フレームの内部補強

 

精密部品にはミクロン単位の精度が必要ですが、金型を使ったプレス加工なら安定して高精度で量産できます。

まさに“精密+大量生産”の理想形でもあります。

 

5.日用品・文具

 

薄い金属を正確に・大量に作る必要がある製品にプレス加工が使われています。

 

・スプーン、フォーク

・カギ

・ホチキスの針

・ベルトのバックル

 

シンプルな形状でも、強度や手触りが重要な日用品こそ、プレス加工が活きてきます。

 

 

プレス加工の未来展望

 

 

プレス加工は100年以上続く技術ですが、社会が求める“ものづくり”が、かつてないスピードで進化している今、大きな変革の時代を迎えています。

「プレス加工」と聞いて、あなたが思い浮かべる光景はどんなものでしょうか。

――ガシャン、ガシャン、と金属音がリズムよく響く工場で、巨大な機械が金属の板を力強く押しつぶす。

作業服を着た熟練の職人たちが、そのそばで黙々と作業を続けている…。

そんな「昭和のものづくり」の象徴のような風景を思い浮かべる人も少なくないはずです。

実際、プレス加工は明治時代から使われ続けてきた、金属加工の超ロングセラー技術です。

そのため、「プレス加工=古い技術」として誤解されることもあります。

かつての製造業は、「いいものを、たくさん、長く作る」ことが価値でした。

しかし、現代社会が求めるものは「高品質×高速×柔軟×持続可能」という非常に高度な総合力です。

その点、プレス加工は、構造がシンプルで基本原理が明快応用範囲が広く、デジタル技術との融合がしやすいという強みを持っています。

「自在に進化できる」これがプレス加工の技術の本質なのかもしれません。

100年続いてきた技術が、これからの100年を支える。

ここでは始まりつつある「ものづくりの未来」を見ていきましょう。

 

プレス加工 × デジタル化

 

AIやIoT、5Gなどのデジタル技術と融合し、「スマートファクトリー」へと進化していきます。

たとえば、

金型にセンサーを内蔵して、リアルタイムで温度や圧力をモニタリング

AIが加工状況を自動学習・最適化して、不良率を低減

遠隔監視や無人化で、夜間も工場が動き続ける

このような仕組みは、人手不足や品質管理の高度化といった現代の課題にも直結しています。

 

サステナブル製造

 

境負荷を抑えたものづくりが求められる中、プレス加工の“省資源・低エネルギー”特性が再評価されています。

・切削加工に比べて材料ロスが少ない

・廃棄物が少なく、再利用も可能

・大量生産でCO₂排出を最小限に抑えられる

昨今のSDGs推進により、脱炭素社会(カーボンニュートラル)をめざす製造業にとっては、プレス加工の「環境対応力」は今後ますます重要な要素となります。

さらに近年は、電動サーボプレス機の導入や、潤滑油の再利用・無潤滑加工技術などによって、プレス加工そのもののエネルギー消費や環境負荷の低減も進んでいます。

プレス加工は、持続可能なものづくりを支える環境配慮型の加工法としての位置づけで注目され始めているのです。

単なる生産効率だけでなく、資源の最適活用・CO₂削減・ライフサイクル全体での環境影響の最小化など、これからのものづくりに必要な視点を実現化できる段階に来ています。

Green Press(グリーンプレス)

効率と環境配慮の両立を目指す、次世代のプレス加工の在り方を象徴する未来のキーワードとなっています。

 

新素材への対応力

 

EV(電気自動車)、航空機、医療など、軽くて強い新素材の需要が年々高まっています。

・高張力鋼板(ハイテン)

・チタン合金

・アルミニウム系複合材

・マグネシウム合金

これらの素材は加工が難しく、従来のプレス技術では対応しづらいものもあります。

しかし近年は、

サーボプレスの導入による加工制御の高度化

潤滑技術の進化による摩擦低減

超高精度な金型加工による歩留まり向上

 

「素材に合わせて技術が進化する」

これもプレス加工の柔軟性と言えます。

 

少量多品種にも対応できる柔軟な加工

 

これまでは「大量生産」が得意だったプレス加工。

しかし最近では、金型の標準化・モジュール化によって、少量多品種生産への対応も可能になってきました。

 

【金型のパーツ化・モジュール化】

従来のように一体構造の金型を作るのではなく、複数の部品に分割し、必要に応じて組み替える方式が普及しています。

これにより、製品形状のバリエーションに柔軟に対応でき、一部の金型パーツを流用しながらコストも抑えられるようになっています。

 

【デジタルシミュレーションによる試作の高速化】

CAD/CAMによる設計だけでなく、金属の流れ方や変形挙動を事前に解析するシミュレーション技術が進化しています。

試作前に問題点を洗い出せるため、試作回数そのものが減り、開発期間が大幅に短縮されています。

 

【クラウド設計・遠隔連携の実現】

設計データやシミュレーション結果をクラウド上で共有・管理する体制も整ってきました。

その結果、本社と地方工場、あるいは異なるサプライヤー間でもリアルタイムに金型開発・製造のやり取りが可能となり、地域や距離を越えたものづくりが加速しています。

 

製品ライフサイクルが短くなり、個別ニーズが多様化する中で、「必要な時に、必要な数だけ、素早く、高品質に作る」という柔軟性が、ものづくりの競争力を左右するようになってきました。

プレス加工は、多品種・短納期・小ロット生産という現代的なニーズにも応えられる柔軟な加工技術へと変貌しつつあります。

 

 

プレス加工まとめ

 

どれだけ技術が進化しても、最終的にそれを動かすのは「人」の知恵と判断力です。

・職人の感覚をデジタルに置き換える

・現場のノウハウを継承する教育環境を整える

・技術と設計をつなぐエンジニアの育成

人材と技術の両方が揃ってこそ、プレス加工は次の100年も進化を続けていくでしょう。

未来に向けて、人と技術の融合こそがカギを握ると言えます。

我々は、進化するプレス加工の技術力を活かし、お客様一人ひとりの「困った」に真摯に向き合い、解決に導くことを使命としています。

・小ロットのご相談にも対応

・高精度な製品の量産化に強み

・金型製作から加工、品質保証まで一貫対応

・柔軟な設計対応と丁寧なヒアリングで課題に寄り添う

どんなに技術が進化しても、最後は「人」がものづくりの質を決める――

そんな信念を持って、私たちは現場とお客様に向き合い続けています。


「この部品、プレスでできないかな?」
「現行の金型でバリエーション展開できないか?」
「コストも納期も、そろそろ見直したい…」

そんな時こそ、お気軽にご相談ください。

私たちは、100年の歴史を持つプレス加工の技術に、“今”と“これから”をつなぐ視点を加えながら、
みなさまのものづくりを、そっと、確かに、支えていきます。

TOPに戻る